相続法改正の概要

最近,相続に関する法律が大きく改正されたのをご存知でしょうか?

民法が約120年ぶりに改正されて,現代社会のニーズに応じた内容に変更されました。

たとえば,遺言書の書き方や保存方法,預貯金の払い戻し,介護したときの寄与料など皆様に身近な内容が数多く変更されているので,正しく把握しておきましょう。

 

今回は相続法改正の概要について,恵比寿の弁護士が解説いたします。

1.自筆証書遺言の「財産目録」の書き方

従来の法律では「自筆証書遺言」は「遺言者が全文を自筆」で書く必要がありました。遺産の内容を表にした「財産目録」もすべて1つ1つ手書きしなければならなかったので大変な手間となり,間違いなども多く発生していました。

法改正により,自筆証書遺言でも「財産目録」の部分のみパソコンで作成したり代書を依頼したり預貯金通帳,登記簿謄本の写しを添付したりする方法が認められるようになりました。ただし,これらを添付する場合でも遺言者の署名押印が必要となります。また,他の部分はすべて自筆しないと無効になります。

この規定は2019年1月13日から有効になっています。

2.自筆証書遺言を法務局で保管できる

改正後の民法では自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる新制度が始まります。

この制度を利用すれば遺言者自身が自宅で保管しなくて良いので紛失や変造,同居人による破棄隠匿などを防げます。

また,相続人が法務局で遺言書の内容を確認できるようになる予定となっており,法務局に預けた遺言書については,相続発生後家庭裁判所での「検認」が不要となります。

この制度が始まるのは2020年7月10日です。

3.配偶者居住権とは

法改正により「配偶者居住権」という権利が新設されました。これは「配偶者が被相続人名義の家に住み続ける権利」です。

配偶者が遺産分割協議の際に「配偶者居住権」を相続すれば,所有権を取得しなくても亡くなるまで家に住み続けられます。配偶者居住権の評価額は通常家の時価より低いので,配偶者は配偶者居住権と預貯金を取得し子どもが家の所有権を取得するなどの方法で,配偶者の生活を守ることも可能となります。

また,配偶者には「配偶者短期居住権」という権利も認められるようになります。これは,被相続人の死亡後6か月又は遺産分割成立時の遅い方の時期まで配偶者が家に住み続けられる権利です。被相続人が亡くなって子どもなどに家が遺贈された場合でも,配偶者はすぐに家を出て行く必要がありません。

配偶者居住権,配偶者短期居住権ともに制度が開始する時期は2020年4月1日を予定しています。

4.預貯金の早期払い戻し

改正民法により,遺産分割前に預貯金を払い戻せる制度が新設されました。

これまで,金融機関は「遺産分割協議(調停,審判)」が成立するまで被相続人名義の預貯金口座を凍結し,一切の払い戻しに応じない運用をしてきました。しかし,それでは相続人たちが葬儀費用も出せない可能性がありますし,被相続人の預貯金に頼って生活してきた相続人の生活も危うくなります。そこで,遺産分割協議成立前であっても一部の預貯金払い戻しが認められるようになりました。

預貯金の早期払い戻しの制度は2019年7月1日から既に有効となっています。

5.遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求権への変更

兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」が認められます。遺留分とは一定の被相続人と近しい相続人に最低限補償される遺産取得割合です。不公平な遺言などによって子どもや妻が遺産を取得できなくなっても,遺留分を請求して最低限の取得分を取り戻すことが可能です。

従来の法律では,遺留分は「遺産」という「現物」を取り戻す権利でした。たとえば不動産なら不動産そのものを取り戻し,株式なら株式そのものを取り戻していたのです。すると遺留分を請求したとき,当事者が望まなくても遺産が「共有」状態になってしまう不都合がありました。共有状態を解消したければ,あらためて「共有物分割請求」をしなければならないという大変面倒な事態になっていたのです。

改正法ではそういった問題点を見直し,遺留分の請求権は基本的に「金銭請求」に変更されました。今後は遺留分請求を受けた側は「お金で賠償すれば良い」ので遺産が共有になる可能性はありません。また,一括払いが難しい場合には分割払いも認められるようになります。

この規定については2019年7月1日からすでに有効となっています。

6.特別寄与料の新設

これまで相続人以外の人には「寄与分」は一切認められていませんでした。寄与分とは被相続人の財産の維持や形成に特別に貢献したことによって遺産を多めにもらえる分です。相続人が献身的に介護した場合には寄与分をもらえるので遺産を増やしてもらえましたが,長男の嫁や孫などがどんなに介護をしても本人には一切遺産取得が認められなかったのです。

改正法ではその点が変更され,一定範囲の親族が相続財産の維持や形成に特別に貢献した場合には「特別寄与料」が認められるようになりました。

今後は長男の嫁や孫にも特別寄与料が認められ,遺産を一部受け取れるようになります。

この規定も2020年7月1日から有効となっています。

7.特別受益の範囲について

これまで相続人が被相続人から生前贈与を受けた場合,どんなに古い生前贈与でもすべて「特別受益」と評価されてきました。このことが原因で,遺産分割協議の際に何十年も昔の学費の支援などが取り上げられて争われるケースなどが発生していました。

改正法では相続人が生前贈与を受けた場合にも特別受益の範囲は「相続開始前10年間」に限られます。それ以上古い生前贈与を受けても特別受益にならないので,遺産分割協議の際に古い話を蒸し返す必要がなくなります。

この規定は2020年7月1日から有効となっています。

8.不動産所有権の対抗要件

これまで不動産を相続した場合,相続人は登記をしなくても第三者へ所有権を主張できました。しかしそれでは登記をせずに放置する人が増えて困るので,今後は登記をしないと第三者へ権利主張できなくなります。

不動産を相続したら早めに登記しないと誰かに取られてしまう可能性が高くなるので,早めに相続登記を済ませましょう。
この規定も2020年7月1日から既に有効となっています。

 

相続法はいろいろな点で大きく変わっていますし各制度によって施行時期も少しずつ異なります。相続への対応でわからないことがありましたら,いつでも恵比寿の弁護士までお気軽にご相談下さい。

 

法律相談の受付

03-6408-8600(平日9:00~20:00)

ご相談予約フォーム(24時間受付 )

初回無料相談。当日・土日祝日・夜間の相談も可能な限りご対応いたします。