退職後の不正競業禁止特約に基づいて、退職者の不正競業行為を阻止した事例
事案の概要
A社は不動産仲介事業をしています。B氏はA社に入社し、営業スタッフとして勤務していました。A社はB氏から、退社後の不正競業禁止条項を含む誓約書を取り付けていました。
B氏は自己都合で退職することになりました。その後まもなく、B氏は不動産仲介事業を始め、A社の顧客に向けて、A社と同じフォーマットの物件紹介など、A社と同一の手法で営業活動を行いました。
これを知ったA社は、B氏の誓約違反を止めさせたいと当事務所を訪問されました。
解決までの流れ
当事務所では、B氏に対し不正競業行為は誓約違反である旨の警告書を送付しました。これに対し、B氏は受取りを拒否しました。電話を掛けたりメールを送信したりしましたが、B氏からの応答はありませんでした。B氏の自宅を訪問しましたが不在でした。
そうこうするうちに、B氏は営業を中止し半年以上が経過しました。このことから、A社の目的は事実上達成されたと考えられました。
コメント
退職後の競業禁止特約は労働者の職業選択の自由にかかわる制約なので、その有効性は厳格に判断されます。しかし、もっぱらA社の顧客にA社とそっくりの手法で営業を仕掛けることは不正な競業行為であり、禁止の対象になるでしょう。
本件では競業禁止条項の有効性やその射程範囲が問題となり得る事案でしたが、B氏自身が営業を事実上廃止したため、事実上終了しました。