取締役が、自己が経営する会社の顧客との間で会社のために取引をしたことは利益相反取引に該当するおそれがあると判断された事例
事案の概要
Aさんは大手コンビニチェーンの子会社Bの代表取締役を務めていました。B社は、新規出店予定のビル1棟を賃借することにしましたが、新店舗に必要なのは1階だけであったことから、2階を転貸することにしてテナントを募りました。Aさんは候補の一つとしてC社を担当者に取り次ぎました。B社はC社をテナントに選定し、AさんはB社を代表してC社と賃貸借契約を締結しました。
ところでAさんは、幅広い人脈を生かしてコンサルティング会社Dを経営していました。C社はD社の顧客で、D社はC社からコンサルティング報酬を得ていました。
このことを知った親会社は、Aさんに利益相反取引の嫌疑をかけ、調査を行うことにしました。Aさんは、自身を防衛するためのアドバイスを求めて当事務所を訪問されました。
解決までの流れ
Aさんは、C社の選定作業には一切関わっていない、C社はもっとも高い賃料を提示した会社であり、外形的に見ても利益相反には当たらないと弁明しました。
当事務所では、Aさんの説明をもとに弁明書を作成し、また想定される親会社からの質問などに対してどう対応するかを綿密に協議しました。調査の結果はグレー判定でした。
コメント
一般的には、会社法上の利益相反取引の定義よりもはるかに広範な行為が、利益相反取引として禁止されています。外形的に見ればAさんのケースでも利益相反取引に該当する可能性があります。