海外事務所の従業員が公私混同行為を繰り返したことから、当該従業員を懲戒解雇した事例
事案の概要
A社は食料品の輸入販売を行っていました。
B氏は輸入先C国事務所の所長としてA社C国事務所に赴任していました。
コロナ禍の影響で、C国と行き来することができなくなり、日本の本社の管理がC国事務所に行き届かなくなりました。
B氏は、事務所内に私物を持ち込む、私用電話をする、私用で外出する、事務所敷地内に巨大な私物を設置するなどして公私混同を続けました。
コロナ禍が治まって、C国事務所を視察したA社幹部は、C国事務所の有様に呆れ、B氏に私物の撤去や私用電話の料金を請求しました。
しかし、B氏は一向に従おうとしなかったので、A社はB氏を解雇しました。
これに対してB氏は、解雇無効として地位確認、未払賃金及び将来賃金を請求する労働審判を申し立てました。
当事務所はA社の代理人としてこれに対抗しました。
解決までの流れ
労働審判では、B氏の行動に異常性が解雇理由たり得るかという点が争われました。
審判委員の発言からは、解雇の有効性は微妙であると感じられました。
そこで当方は、解雇を認めてもらえるのならば、未払賃金請求額相当の解決金支払いに応じるという提案を出しました。
審判委員もこれに賛成しました。調停案として、解雇は有効としつつ、未払賃金請求相当額の解決金支払いを提示しました。
B氏側もこれに同意したことから、調停が成立しました。
コメント
B氏の公私混同ぶりは常軌を逸し、目に余るものがありました。
それでも審判委員が解雇の有効性認定に慎重であったのは、A社の解雇までの一連の動きが拙速であったからだと思われます。