未払賃金請求に対し、勧奨退職割増金の支払に含まれているとして請求を拒否した事例
事案の概要
A氏は自分に対する上司の評価が低すぎると不満を抱き、その上司に常に反抗的な態度を取り、また、嫌がらせを繰り返しました。この事態にB社は、A氏に退職を勧奨しました。A氏とB社は、B社が給与3か月分の退職割増金をA氏に支払うとの条件で、A氏の退職を合意しました。
ところが、A氏は退職金受領後になって、未払賃金が支払われていないと抗議してきました。B社は未払賃金の発生を認めませんでした。
B社は、A氏に対する対応をどのようにすればよいかを当事務所に相談されました。
解決までの流れ
A氏とB社は退職合意書を交わしていました。その合意書の中には、B社の一切の債務を含むこととして割増金を支払うこと、合意書記載のほかには一切の債権債務がないことが記載されていました。
この条項があることから、当方は、たとえ未払賃金が発生するとしても割増金に含まれており、清算済みであると反論したところ、A氏はこの反論を争ってはきませんでした。
コメント
およそ、和解契約を結ぶにあたっては、一切の紛争を解決する目的であること、和解契約の記載以外に債権債務はないことの確認(清算条項)が不可欠です。
本件でも、割増金の射程距離や清算条項が明記されていたので、A氏の主張を封じることができました。